Twitterで話題!「#名画で学ぶ主婦業」がシンガポールで通じないわけ

今年の春頃、Twitterのハッシュタグ「#名画で学ぶ」シリーズが話題に上がった。

中でも「#名画で学ぶ主婦業」は、ミレーやレンブラントといった有名画家たちの作品を、主婦たちが日頃直面している「あるある」情景と重ね合わせもの。

この「吹き出しにセリフを入れろ!」ゲームが、かなり盛り上がっているようだ。

結構、面白い。笑

題材が「名画」なので、国境を越えてもネタは通じるに違いない。

そう信じて、先日シンガポール人女子たち(子あり主婦、子なし主婦、未婚女性含む)にこの話題を打ち明けてみた。

日本のコミュニティーで「#名画で学ぶ主婦業」が話題になってるんだよ、と。

すると小学5年生の息子を持つ1人のシンガポール人主婦が言った。

あら〜、日本人の主婦は責任が多くて大変そうね。

他の人からも、共感を得るどころか「あまり理解できない」「日本ってすごい」という意見が次々と上がった。

あら、思っていた反応と違う…。

シンガポール人にとっての「主婦業」「子育て」と、日本人の認識するそれらには、非常に大きなギャップがあるようだ。

シンガポールでは主婦業も子育てもメイドの方が有能?

まずシンガポール人の奥様方に指摘されたのは、「主婦1人が料理も洗濯も子育ても100%完璧にこなせるなんて不可能」という点だ。

シンガポールの場合、家事や子育てを負担すべきは「夫」ではなく「メイド」という認識が強い。

2017年6月現在、シンガポールには約24万3,000人もの外国人メイドが滞在しており、今や社会にとって不可欠な存在となっている。

メイドの労働環境改善(特に休暇取得促進)を目的に2015年に公開された、一本のインタビュー動画がある。

「子どもがなりたい職業は?」

「子どもが好きな教科は?」

このような質問を、シンガポール人の母親とメイドの両方に投げかけ、実際の子どもの回答をどちらが多く言い当てられるか比較したものだ。

結果は、実の母親よりもメイドの正答率が高かったペアが74%という衝撃的なものだった。

どちらが子どもと一緒に時間を共有しているか、容易に想像できるだろう。

Mums and Maids #igiveadayoff

シンガポールは決して母親からの愛情がない国ではない。だけど、家賃や教育費が高騰していることから共働きを強いられ、幼い子どもの面倒を見切れぬためメイドを雇うしかない状況に追い込まれている家庭も多い。

結果親として親自身が子どもと向き合う時間を十分に取れず、愛情を持て余したまま悪循環が続く。

そのためシンガポール社会における「#名画で学ぶ主婦業」の絵画で語られる情景は、母親ではなく、メイドの日常という理解がより自然であるようだ。

シンガポールにおける「母親」に求められていること

それではシンガポールにおける「母親」の役割は一体何なのか。

最近シンガポールでも問題視されている「ヘリコプター・ペアレント」という言葉がある。

“They typically take too much responsibility for their children’s experiences and, specifically, their successes or failures,”

Carolyn Daitch, Ph.D/ Parents Magazine

「ヘリコプター・ペアレント」とは文字通り、わが子が困難に遭遇した際、即座にヘリコプターでに助けに来るような過干渉な親のこと。

子どもの成績向上を教師に直談判したり、子どもが家に忘れた教科書や宿題をわざわざ学校まで届けに来たり、オープンハウスでもない通常日にも授業参観を求めるようなケースが多く見られるそうだ。

友人でもあるシンガポールの某インター校の教員は、このように言及していた。

ヘリコプターペアレントは、自分の子どもたちの成功に全てを賭けているのよ。学業においては常に自分の子が1番に輝いて表彰されるべきだと思っている。スポーツでもトロフィーを勝ち取ることにこだわる。

我が子をそういったトップ層へと導くのが、自分たちの役目だという使命感に駆られているの。

つまりシンガポール人の母親にとって最大の「主婦業」ミッションの1つは、子どもを多芸多才の成功者に育て上げることなのだ。

「#名画で学ぶ主婦業」がシンガポールで通じないわけ

メイドを雇っているシンガポール人の母親たちにとっての「主婦業」は、日本人による「#名画で学ぶ主婦業」にみられる「主婦業」とは根本的な考えが異なる。

日本のコミュニティーで「#名画で学ぶ主婦業」がウケたのは、切磋琢磨する慌てっぷりに多くの人々が深く共感し、心を動かされたからだろう。

しかし「子どもたちの面倒を”見ててやった”と言われた」「洗濯物終了の音がしたけれど気が進まない」「夫にソーメン”で”いいと言われた」というシチュエーションは、シンガポールでは実現しにくい。

だって、ほぼメイドの仕事だから。

「#名画で学ぶ主婦業」がシンガポール人主婦の間でなかなか理解してもらえなかった原因は、このような文化背景の違いにある。

もし彼らが同じように「#名画で学ぶ主婦業」をツイートしてくれたとしら、どういった”ボケ”が拡散されるだろうか。

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